FIG-0142 / 人物・神格(Figure) / 神格
キサカヒメ
Kisakahime
確度 A学術的定説
別名:支佐加比売命、枳佐加比売命、佐太大神の母神
出雲国風土記島根郡加賀神埼の条に、佐太大神を産んだ母神として記される。出産にあたって弓矢を失い、わが御子が麻須羅神の御子であるならば失せた弓矢よ出でよと祈ると角の弓矢が流れ出たが、これは違うと投げ棄て、次に現れた金の弓矢で暗い岩屋を射通したという。産む神が自ら光をもたらす形の誕生譚であり、記紀の神話体系に対応する場面はない。古事記の𧏛貝比売と名を同じくするが、オオナムチを蘇らせる役を負う記の神とは機能が異なる。
実在性の評価 神話的存在
出雲国風土記島根郡の加賀郷および加賀神埼の条にのみ現れる神で、歴史的実在は想定されない。名は赤貝を指すキサ貝に由来するとみられ、古事記のオオナムチ蘇生譚に現れる𧏛貝比売と同じ語であることから両者を結ぶ説があるが、出雲国風土記の側にそれを支える記述はない。
この評価は、その存在が歴史的に実在したかについての学説の分布を示すものである。 実在しないことは、その物語が果たしてきた働きを少しも減じない。
祭祀と受容
松江市島根町の加賀神社が支佐加比売命を祀り、延喜式神名帳の出雲国島根郡にも加賀神社の名が見える。出産の舞台とされる加賀の潜戸は現在も遊覧船が通う景勝地であり、風土記が記す声を上げて過ぎねばならないという禁忌は洞窟に対する在地の畏れの記録として読まれてきた。古事記の𧏛貝比売と名を共有するが、両者を同一とする理解は出雲側の伝承には見えない。