NAR-0085 / 物語(Narrative) / カテゴリ:未来
ユートピア文学の系譜
The Utopian Literary Tradition
確度 A学術的定説
発生年代
1516年(トマス・モア『ユートピア』刊行)。前史としてプラトン『国家』および千年王国的伝承
発生地域
中核テキスト
伝播経路
ルネサンス期の人文主義者による架空の島の記述から始まり、17世紀の科学的ユートピア、19世紀の産業社会を主題とする共同体構想、20世紀のフェミニズム・エコロジー的ユートピアへと主題を移しながら継続した。植民地接触の情報が「他所の完全な社会」という形式に素材を供給し、翻訳を通じてヨーロッパ外へも広がった。
現在の信奉者規模
測定不能(文学的系譜であり帰属人口の統計がない。「ユートピア」を理想の提示と読むか、現状を照らし返す風刺装置と読むかで系譜の範囲が変わり、モア自身の意図についても解釈が分かれている。)
対抗物語
(なし)
現代への影響
政策構想や社会運動が自らの目標を語る際の形式を提供し続けている。20世紀の全体主義経験を経て、完全な社会の設計という発想そのものへの警戒(ポパーらの批判)が定着し、現在は部分的・可逆的な構想として語り直される傾向が強い。
関連する関係レコード
派生 Derivation キリスト教 → ユートピア文学の系譜 確度B
完全な共同体を地上に想像するという形式は、神の国と千年王国をめぐるキリスト教的想像力と修道院共同体の生活規則を世俗的な統治設計へ転位させたものである。モア自身がカトリックの人文主義者であったことは、この系譜の起点を規定している。
派生 Derivation ユートピア文学の系譜 → ディストピア文学の系譜 確度A
完全な社会の設計という形式を保持したまま評価符号を反転させることで成立した。ザミャーチンの『われら』以降、ユートピア的計画の実現がもたらす帰結を描く形式が定着し、両者は同一の想像力の表裏として論じられる。
派生 Derivation ユートピア文学の系譜 → 社会主義 確度B
サン=シモン、フーリエ、オーウェンらの共同体構想は、理想社会の文学的記述の伝統を実践的な社会改革の計画へ転じたものであり、マルクスとエンゲルスが「空想的社会主義」と名づけて自らの立場を対置した対象でもある。