NAR-0086 / 物語(Narrative) / カテゴリ:未来

ディストピア文学の系譜

The Dystopian Literary Tradition

確度 A学術的定説
発生年代
1920年代〜1940年代(『われら』1924年、『すばらしい新世界』1932年、『1984年』1949年)
中核テキスト
(なし)
伝播経路
産業社会の合理化と20世紀前半の一党支配国家の経験を素材として、ユートピアの形式を反転させる作品群が生まれた。冷戦期には東西双方で異なる読み方を伴って流通し、20世紀後半以降は環境破壊、監視技術、生殖技術、パンデミックへと主題を広げ、若年層向け文学と映像を通じて大衆的形式となった。
現在の信奉者規模
測定不能(文学的系譜であり帰属人口の統計がない。個々の作品が何を批判の標的としていたかは論争的で、たとえば『1984年』は一党支配体制への批判とも、戦時下の英国を含む官僚制一般への批判とも読まれてきた。)
対抗物語
(なし)
現代への影響
監視、情報操作、生殖技術をめぐる公共の議論において、参照点となる語彙(ビッグ・ブラザー、新語法)を供給している。一方で、現実の制度分析を作品の比喩に置き換える議論の粗雑化を招くという指摘もある。

関連する関係レコード

派生 Derivation ディストピア文学の系譜サイバーパンク 確度A

技術が可能にする管理社会という主題を、国家ではなく多国籍企業と情報ネットワークの側に移し替えることで成立したジャンルである。悲惨な未来の細部を描く形式は反ユートピア文学から継承されている。

成立:1980年代 / 根拠:ブルース・スターリング編『ミラーシェード』序文(1986); トマス・フォスター『The Souls of Cyberfolk』(2005)

派生 Derivation ユートピア文学の系譜ディストピア文学の系譜 確度A

完全な社会の設計という形式を保持したまま評価符号を反転させることで成立した。ザミャーチンの『われら』以降、ユートピア的計画の実現がもたらす帰結を描く形式が定着し、両者は同一の想像力の表裏として論じられる。

成立:1920年代 / 根拠:グレゴリー・クレイズ『Dystopia: A Natural History』(2016); クリシャン・クマー『Utopia and Anti-Utopia in Modern Times』(1987)

対立 Opposition ディストピア文学の系譜ファシズム 確度B

一党支配と大衆動員による統治を主題化した作品群は、その体制が掲げる新しい人間と新しい秩序の物語を内側から反転して描いた。両者は同じ20世紀の政治的経験を、正当化と警告という逆方向から語る関係にある。

成立:1930年代〜1940年代 / 根拠:ジョージ・オーウェル『1984年』(1949); ハンナ・アーレント『全体主義の起源』(1951)