NAR-0027 / 物語(Narrative) / カテゴリ:宗教

キリスト教

Christianity

確度 A学術的定説
発生年代
1世紀前半(30年前後のイエス処刑と初期共同体の形成)
発生地域
地中海世界
中核概念
救済終末論主権
伝播経路
第二神殿期ユダヤ教内部の運動として始まり、パウロらの伝道により地中海都市のギリシア語話者へ広がった。4世紀のローマ帝国による公認と国教化を経て制度化され、中世には東方正教と西方教会に分立、近世以降は宣教と植民地化を通じて南北アメリカ・アフリカ・アジアへ拡大した。
現在の信奉者規模
10億超(Pew Research Center の2010年推計で約21億8,000万人、2020年前後の推計では約24億人。教派ごとの成員定義の差により推計には幅がある。)
対抗物語
(なし)
現代への影響
暦、祝祭、法と倫理の語彙、教育・医療の制度史に広範な痕跡を残す。20世紀後半以降はサハラ以南アフリカとラテンアメリカの教会の比重が高まり、世界のキリスト教人口の重心が南半球へ移動したことが指摘されている。

関連する関係レコード

派生 Derivation ユダヤ教キリスト教 確度A

第二神殿期ユダヤ教内部のメシア運動として始まった集団が、律法遵守と異邦人の受け入れをめぐる論争を経て別個の宗教共同体として分立した。分離を1世紀の出来事とみるか2〜4世紀の漸進的過程とみるか(「道の分かれ」論争)については議論があるが、系譜そのものは学術的に確立している。

成立:1世紀 / 根拠:E.P.サンダース『イエスとユダヤ教』; ジェイムズ・D.G.ダン『The Partings of the Ways』; ダニエル・ボヤーリン『Border Lines』

派生 Derivation キリスト教イスラーム 確度B

後期古代のアラビア半島とその周辺にはユダヤ教・キリスト教の共同体と聖書的物語群が広く流通しており、クルアーンはこれらの人物や主題を共有しつつ独自の啓示理解を提示した。イスラーム側の自己理解では派生ではなく本来の一神教の回復とされるため、ここでの「派生」は共通の宗教的環境からの歴史的連続性を指すにとどまり確度はB。系譜はユダヤ教→キリスト教→イスラームの順で記述し、ショートカット禁止規則によりユダヤ教→イスラームの直接エッジは張らない(ユダヤ教側からの独立した影響が大きい点は留保として記す)。

成立:7世紀 / 根拠:アンジェリカ・ノイヴィルト『Der Koran als Text der Spätantike』; フレッド・ドナー『Muhammad and the Believers』; シドニー・グリフィス『The Bible in Arabic』

派生 Derivation キリスト教プロテスタンティズム 確度A

贖宥をめぐる論争を契機に、聖書のみ・信仰のみ・万人祭司を掲げる諸教会がローマ教会から分立した。印刷術による論争文書の流通と領邦君主の政治的支持が分立を不可逆にし、アウクスブルクの和議とウェストファリア条約で法的に定着した。

成立:1517年〜1648年 / 根拠:ディアメイド・マカロック『宗教改革』; ハイコ・A・オーバーマン『ルター』; エリザベス・アイゼンステイン『印刷革命』

習合 Syncretism キリスト教サンテリア 確度A

カトリックの聖人崇敬・暦・秘蹟の枠組みがオリシャと対応づけられ、サンテリアの儀礼構造と語彙に組み込まれた。既存のREL-0020は同じ過程を一神教(アブラハム系)とヨルバ宗教という上位水準で一括して記述しており、本エッジおよびREL-0039、REL-0041〜0044はその具体化にあたる。対応づけを迫害下の擬装とみるか真正な融合とみるかで解釈が分かれる。

成立:16〜19世紀 / 根拠:ロジェ・バスティド『ブラジルにおけるアフリカ系宗教』; J.ロラン・メイトリー『Black Atlantic Religion』; デイヴィッド・H・ブラウン『Santería Enthroned』

習合 Syncretism キリスト教カンドンブレ 確度A

カトリックの聖人暦・図像・兄弟会(イルマンダーデ)の組織が、テレイロの祝祭暦と神格の対応づけの枠組みとして用いられた。20世紀後半にはカトリック的要素を除去しようとする「再アフリカ化」の運動も現れており、習合の度合いは時期と教団により異なる。

成立:19世紀 / 根拠:ロジェ・バスティド『ブラジルにおけるアフリカ系宗教』; ステファニア・カポネ『Searching for Africa in Brazil』; ピエール・ヴェルジェ『Orixás』

習合 Syncretism キリスト教ハイチのヴードゥー 確度A

カトリックの聖人図像・祈祷文・洗礼がロア(精霊)の体系と重ね合わされ、ヴードゥーの儀礼言語の一部となった。ハイチでは自らをカトリック信徒と認識しつつヴードゥーを実践する併行が一般的であり、両者は排他的な選択肢としては機能してこなかった。

成立:18〜19世紀 / 根拠:アルフレッド・メトロー『Le vaudou haïtien』; カレン・マッカーシー・ブラウン『Mama Lola』; レスリー・G・デマングル『The Faces of the Gods』

習合 Syncretism キリスト教ローマ建国神話 確度B

エウセビオス以降の摂理史観がローマの普遍支配を神の計画のうちに位置づけ、建国以来の「永遠のローマ」という自己叙述がキリスト教的な救済史へ組み込まれた。ウェルギリウス的な使命の観念とキリスト教的終末観の接合は、中世の「ローマの継承」言説にも引き継がれた。アウグスティヌスのように地上の国と神の国の同一視を退ける有力な立場もあり確度はB。

成立:4〜6世紀 / 根拠:エウセビオス『コンスタンティヌスの生涯』; アウグスティヌス『神の国』(批判側); ピーター・ブラウン『古代末期の世界』

対立 Opposition キリスト教フランス共和国の物語(自由・平等・友愛) 確度B

教育、戸籍、公的儀礼における教会の役割をめぐり、革命期の聖職者民事基本法から1905年の政教分離法に至る対立が展開した。対立の当事者は主にフランスのカトリック教会であり、キリスト教一般との対立に一般化することはできない。20世紀後半以降、制度をめぐる正面対立は沈静化している。

成立:1789年〜1905年 / 根拠:ジャン・ボベロ『政教分離の歴史』; ルネ・レモン『L'anticléricalisme en France』; モーリス・アギュロン『La République』

派生 Derivation キリスト教カトリック 確度A

ラテン語圏の教会がローマ司教の首位性と普遍的裁治権を軸に自己を組織し、東方教会との相互破門を経て別個の制度体となった。トリエント公会議で教義と規律が明文化され、輪郭が確定した。

成立:4〜5世紀/1054年 / 根拠:Diarmaid MacCulloch, A History of Christianity; ハンス・キュンク『キリスト教』

派生 Derivation キリスト教東方正教 確度A

ギリシア語圏の教会が七つの全地公会議の決定を教義の完結した基準とし、五総主教座の同格性を前提とする教会観を保持した。1054年の相互破門と1204年の第4回十字軍によるコンスタンティノープル劫掠を経て分離が既成事実化した。

成立:4〜8世紀/1054年 / 根拠:Timothy Ware, The Orthodox Church; Steven Runciman, The Eastern Schism

派生 Derivation キリスト教ユートピア文学の系譜 確度B

完全な共同体を地上に想像するという形式は、神の国と千年王国をめぐるキリスト教的想像力と修道院共同体の生活規則を世俗的な統治設計へ転位させたものである。モア自身がカトリックの人文主義者であったことは、この系譜の起点を規定している。

成立:16世紀初頭 / 根拠:クリシャン・クマー『Utopianism』(1991); J.C. デイヴィス『Utopia and the Ideal Society』(1981)