NAR-0020 / 物語(Narrative) / カテゴリ:近代イデオロギー

社会主義

Socialism

確度 A学術的定説
発生年代
1820年代〜1840年代
発生地域
西ヨーロッパ
中核テキスト
共産党宣言
中核概念
階級、進歩、天賦人権
伝播経路
サン=シモン、オーウェン、フーリエらの構想が労働運動と結合し、1848年の『共産党宣言』以降は国際労働者協会や各国の社会民主党を通じて組織化された。20世紀には革命政権、社会民主主義的福祉国家、脱植民地期の開発戦略という複数の形態に分岐した。
現在の信奉者規模
測定不能(党員数や政党支持率は国ごとに存在するが、思想への帰属を示す国際比較可能な統計はない。)
対抗物語
資本主義
現代への影響
労働法、社会保障、累進課税など再分配制度の形成に関与し、格差、公共所有、労働時間をめぐる現代の政策論争でも参照される。

関連する関係レコード

派生 Derivation ドイツ観念論 → 社会主義 確度A

マルクスがヘーゲル弁証法を「転倒」させ、絶対精神の自己展開の物語を物質的生産関係と階級闘争の物語へ組み替えた。青年ヘーゲル派の宗教批判を経由した理論的派生であり、社会主義の科学的自己定位の中核をなす。

成立:1840年代 / 根拠:マルクス『資本論』第1巻第二版後書き; マルクス『経済学・哲学草稿』; ルカーチ『歴史と階級意識』

対立 Opposition 資本主義 → 社会主義 確度A

生産手段の私的所有と市場的調整を正当とする物語と、それを廃棄して社会的所有・計画的調整へ移行すべきとする物語の正面対立。19世紀以降の政治対立軸の基軸をなす。

成立:1848年 / 根拠:マルクス/エンゲルス『共産党宣言』; カール・ポランニー『大転換』

対立 Opposition ナショナリズム → 社会主義 確度A

帰属の第一義を国民に置く物語と、階級を第一義に置き国際的連帯を掲げる物語の対立。第一次世界大戦時に社会主義政党が自国支持へ転じたことで、両者の緊張が歴史的に露呈した。

成立:1848年〜1914年 / 根拠:マルクス/エンゲルス『共産党宣言』; エリック・ホブズボーム『ナショナリズムの歴史と現在』; ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』

習合 Syncretism 社会主義 → ネグリチュード 確度B

サンゴールらはマルクス主義の疎外論・計画経済構想を受容しつつ、階級闘争と無神論を退けて共同体的伝統と黒人的感性を基礎に据える「アフリカ社会主義」を定式化した。マルクス主義側からは折衷との批判がある。

成立:1950年代〜1960年代 / 根拠:L.S.サンゴール『アフリカの社会主義(Nation et voie africaine du socialisme)』; ゲイリー・ワイルダー『Freedom Time』

派生 Derivation 社会主義 → アナキズム 確度B

生産手段の社会的所有という綱領を共有しつつ、移行期における国家権力の掌握を否定する潮流として分岐した。第一インターナショナルにおけるマルクス派とバクーニン派の対立が1872年の分裂として制度的に確定した。プルードンの著作は同時代の社会主義諸潮流と並行して成立しており単線的な派生とはいえないため確度はB。

成立:1840年〜1872年 / 根拠:ジョージ・ウドコック『アナキズム』; ジェイムズ・ジョル『The Anarchists』; ダニエル・ゲラン『現代のアナキズム』

対立 Opposition ファシズム → 社会主義 確度A

階級を帰属の第一義とし国際的連帯を掲げる物語と、階級対立を国民的統一のうちに解消すると主張する物語の対立。イタリア・ドイツでは社会主義および共産主義の政党と労働組合が体制成立の過程で解散させられ、対立は制度的に決着した。運動の一部が革命的サンディカリズムに起源をもつ点は、この対立の記述と両立する事実として留保される。

成立:1919年〜1945年 / 根拠:ロバート・O・パクストン『ファシズムの解剖学』; ゼエヴ・ステルンヘル『The Birth of Fascist Ideology』; エリック・ホブズボーム『極端な時代』

派生 Derivation 社会主義 → 脱成長 確度B

資本蓄積と生産力主義への批判という枠組みを継承しつつ、社会主義が共有してきた生産力の発展という目標そのものを退ける立場として定式化された。直接の媒介は政治的エコロジーのゴルツであり、社会主義の系譜内にある。他方、生態経済学(ジョージェスク=レーゲン)とイリイチの制度批判は社会主義の外部にある並行的な源流であり本表に独立項目がないため、本エッジは複数ある源流のうち一つを記録するものである。

成立:1970年代〜2002年(数値は運動化の年を暫定値とする) / 根拠:アンドレ・ゴルツ『エコロジスト宣言』; ニコラス・ジョージェスク=レーゲン『エントロピー法則と経済過程』; ヨルゴス・カリス『Degrowth』

派生 Derivation 社会主義 → 加速主義 確度B

生産力の発展を社会的に再領有し、労働からの解放と自動化の全面化を綱領として掲げる左派加速主義は、社会主義の生産力発展論を技術的加速の語彙で再定式化したものと位置づけられる。本エッジの主張は左派潮流に限定され、右派・無条件加速主義にはこの系譜は当てはまらない。

成立:2013年〜2015年 / 根拠:ニック・スルニチェク&アレックス・ウィリアムズ『Inventing the Future』; アーロン・バスターニ『Fully Automated Luxury Communism』; ベンジャミン・ノイス『Malign Velocities』(批判側)

派生 Derivation 産業革命 → 社会主義 確度B

工場労働者の集住と労働条件が新しい社会問題として認識され、それを説明し変革する物語として社会主義の諸潮流が定式化された。エンゲルスのマンチェスター調査はこの経路の代表例である。

成立:1830年代〜1840年代 / 根拠:エンゲルス『イギリスにおける労働者階級の状態』; E. P. トムスン『イングランド労働者階級の形成』

習合 Syncretism 社会主義 → フェミニズム 確度B

社会主義とフェミニズムは別個に成立した物語であり(フェミニズムの起点1792年はマルクス主義的社会主義に先行する)、両者は19世紀末以降に接合して社会主義フェミニズム/マルクス主義フェミニズムという複合形態を形成した。エンゲルスによる私的所有と家族形態の歴史化、第二波期の家事労働・再生産労働をめぐる論争がその中心であり、リベラル系とは異なる綱領を生んだ。旧版は「社会主義→フェミニズム」の派生として記録していたが、それはフェミニズム全体の系譜的な親を社会主義とみなすことになり、年代的にも学説的にも支持しがたい。フェミニズム全体の系譜上の親は REL-0112(リベラリズム→フェミニズム)で記録し、本エッジは二つの物語の結合という実態に合わせて種別を習合に改めた。

成立:1884年〜1970年代 / 根拠:エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』; Silvia Federici, Caliban and the Witch; ハイジ・ハートマン「マルクス主義とフェミニズムの不幸な結婚」(1979)

習合 Syncretism 社会主義 → 中国的特色ある社会主義 確度B

生産手段の公有と党の指導という枠組みを保持したまま、初級段階論によって市場制度の導入を理論的に位置づけた。社会主義の物語が既存の統治構造と接合し直された形である。

成立:1978年〜1992年 / 根拠:鄧小平『鄧小平文選』第3巻; 中兼和津次『中国経済発展論』

派生 Derivation ユートピア文学の系譜 → 社会主義 確度B

サン=シモン、フーリエ、オーウェンらの共同体構想は、理想社会の文学的記述の伝統を実践的な社会改革の計画へ転じたものであり、マルクスとエンゲルスが「空想的社会主義」と名づけて自らの立場を対置した対象でもある。

成立:19世紀前半 / 根拠:エンゲルス『空想から科学へ』(1880); グレゴリー・クレイズ『Searching for Utopia』(2011)

対立 Opposition 新自由主義 → 社会主義 確度B

資源配分を市場の価格機構に委ねるべきか計画と公的所有に委ねるべきかという経済計算をめぐる論争を起点に、福祉国家の縮減、国有企業の民営化、労働組合の位置づけといった具体的な政策課題で対立した。1989年以降の体制転換は、この対立の帰趨を一方的に確定したものとして語られることが多いが、その評価自体が論争的である。

成立:1970年代〜1990年代 / 根拠:フリードリヒ・ハイエク『隷従への道』(1944); デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義』(2005)