NAR-0045 / 物語(Narrative) / カテゴリ:近代イデオロギー

ファシズム

Fascism

確度 B有力だが異説あり
発生年代
1919年(戦闘者ファッショの結成)〜1922年(政権掌握)/1945年(体制の終焉)
発生地域
西ヨーロッパ
中核テキスト
(なし)
中核概念
国民主権階級
伝播経路
第一次世界大戦後のイタリアで、参戦派の民族主義、革命的サンディカリズムの一部、退役軍人の組織が結合して運動として編成され、1922年に政権を掌握した。以後ヨーロッパ各国に類似の運動が現れ、ドイツの国民社会主義をはじめとする諸体制が成立したが、それらを同一の類型に括りうるかは学説上の論争が続いている。1945年の枢軸国の敗戦により、統治体制としては終焉した。
現在の信奉者規模
測定不能(体制期の党員数(イタリア国民ファシスト党で数百万人規模)の記録はあるが、一党制下の登録であり思想への帰属とは別の指標である。何を「ファシズム」の範囲に含めるか(イタリアに限定する説、ドイツを含む一般概念とする説、戦後の諸運動へ適用する説)が学説上の主要な論争点であるため確度をBとした。中核概念の「階級」は階級対立を国民的統一へ解消するという主張への参照であり、構成要素としてではなく争点として対応させている。)
現代への影響
統治体制としては1945年に終わったが、比較政治学では権威主義的動員、指導者原理、排除的な国民概念を分析する類型として用いられている。歴史学では、体制下で実行された暴力と迫害の記録の検証と、現代の運動へこの語を適用することの妥当性が主要な検討課題である。

関連する関係レコード

派生 Derivation ナショナリズムファシズム 確度B

国民を有機的な統一体とみなす言説が、第一次世界大戦の動員経験と戦後の危機のなかで、国民の再生・敵の排除・指導者への権威集中を掲げる運動の枠組みへ再編された。革命的サンディカリズム由来の要素を重視する説(ステルンヘル)と、民族主義的右派の系譜を重視する説(パクストン)があり、起源の比重は学説上の争点である。

成立:1919年〜1922年 / 根拠:ロバート・O・パクストン『ファシズムの解剖学』; ゼエヴ・ステルンヘル『The Birth of Fascist Ideology』; ロジャー・グリフィン『The Nature of Fascism』

対立 Opposition リベラリズムファシズム 確度A

個人の権利、多元的な代表、権力の抑制を掲げる物語と、国民的統一体への同化と指導者原理を掲げる物語の正面対立。ファシズム側は議会制と個人主義を明示的な批判対象として綱領に掲げ、体制下では複数政党制および報道・結社の自由が停止された。

成立:1922年〜1945年 / 根拠:ロバート・O・パクストン『ファシズムの解剖学』; エミリオ・ジェンティーレ『The Sacralization of Politics in Fascist Italy』; ハンナ・アーレント『全体主義の起原』

対立 Opposition ファシズム社会主義 確度A

階級を帰属の第一義とし国際的連帯を掲げる物語と、階級対立を国民的統一のうちに解消すると主張する物語の対立。イタリア・ドイツでは社会主義および共産主義の政党と労働組合が体制成立の過程で解散させられ、対立は制度的に決着した。運動の一部が革命的サンディカリズムに起源をもつ点は、この対立の記述と両立する事実として留保される。

成立:1919年〜1945年 / 根拠:ロバート・O・パクストン『ファシズムの解剖学』; ゼエヴ・ステルンヘル『The Birth of Fascist Ideology』; エリック・ホブズボーム『極端な時代』

対立 Opposition ディストピア文学の系譜ファシズム 確度B

一党支配と大衆動員による統治を主題化した作品群は、その体制が掲げる新しい人間と新しい秩序の物語を内側から反転して描いた。両者は同じ20世紀の政治的経験を、正当化と警告という逆方向から語る関係にある。

成立:1930年代〜1940年代 / 根拠:ジョージ・オーウェル『1984年』(1949); ハンナ・アーレント『全体主義の起源』(1951)