NAR-0083 / 物語(Narrative) / カテゴリ:未来

トランスヒューマニズム

Transhumanism

確度 B有力だが異説あり
発生年代
1957年(ジュリアン・ハクスリーによる語の使用)/1990年代(宣言と団体による運動化)
中核テキスト
(なし)
中核概念
進歩、シンギュラリティ(技術的特異点)、人格性(パーソンフッド)、救済
伝播経路
進化論的人間観と20世紀の優生思想をめぐる論争を前史として、1980〜90年代の米国と英国で、生命延長、人体拡張、人工知能をめぐる論者が団体と宣言を通じて運動を形成した。2000年代以降はオンラインの論壇、技術系企業の資金、大学の応用倫理研究を経路として拡散している。
現在の信奉者規模
測定不能(運動団体の会員数は公表されるが物語への帰属人口の指標にはならない。想定される技術の実現時期については研究者間の見解の幅が大きく、また能力拡張の推進が20世紀の優生政策とどう区別されるかをめぐる批判に対して、運動内部でも応答が分かれている。)
現代への影響
生命延長研究、脳・機械インターフェース、遺伝子編集をめぐる規範的議論の一方の極を形成している。技術予測としての検証可能性が低いことが、生命倫理の実務からの主要な批判点である。

関連する関係レコード

対立 Opposition ポストヒューマニズムトランスヒューマニズム 確度B

同じ接頭辞を共有しながら方向は逆で、トランスヒューマニズムは人間の能力を技術で拡張して啓蒙主義的な人間像を完成させようとし、批判的ポストヒューマニズムはその人間像そのものを問題化する。両者の混同は文献上も頻繁で、区別の要請自体が論争点となっている。

成立:1990年代〜2010年代 / 根拠:ケイリー・ウルフ『What Is Posthumanism?』(2010); フランチェスカ・フェランド「Posthumanism, Transhumanism…」(2013)

派生 Derivation 科学革命トランスヒューマニズム 確度B

自然を操作可能な対象として記述する科学的世界像を人間自身に適用し、生物学的制約を技術的に改変可能な条件として捉える構えが成立した。進化を人間が引き継ぐという定式は、20世紀の進化生物学の普及と不可分である。

成立:20世紀後半 / 根拠:ジュリアン・ハクスリー『New Bottles for New Wine』(1957); ニック・ボストロム "A History of Transhumanist Thought" (2005)

派生 Derivation リベラリズムトランスヒューマニズム 確度B

身体と精神の改変を個人の選択の領域とみなす「形態的自由」の主張は、自己所有と自己決定というリベラリズムの原理の延長として定式化された。運動の主流はこの自由主義的な枠組みを採り、国家による強制を伴った20世紀の優生政策との差異をそこに求めている。

成立:1990年代〜2000年代 / 根拠:ニック・ボストロム "In Defense of Posthuman Dignity" (2005); ジェイムズ・ヒューズ『Citizen Cyborg』(2004)

習合 Syncretism 長期主義トランスヒューマニズム 確度B

将来世代の規模を重視する長期主義の評価枠組みと、人間の能力拡張を目指すトランスヒューマニズムは、担い手・資金源・議論の場をおおむね共有し、実存的リスクと人類の潜在的可能性という共通の語彙のもとで一体的に流通している。

成立:2000年代〜2010年代 / 根拠:ニック・ボストロム "Existential Risks" (2002); エミール・トレス "Against Longtermism" (2021)