NAR-0044 / 物語(Narrative) / カテゴリ:近代イデオロギー

リベラリズム

Liberalism

確度 B有力だが異説あり
発生年代
1689年(ロック『統治二論』)/1810年代(「リベラル」の政治的呼称の定着)
中核テキスト
アメリカ独立宣言
中核概念
天賦人権主権進歩
伝播経路
イングランドの内戦と名誉革命をめぐる論争のなかで、統治の同意、所有権、宗教的寛容を主張する言説が形成され、アメリカ独立とフランス革命の文書に定式化された。19世紀にはスペインの「リベラレス」を経由して政治的立場の名称として定着し、自由貿易・議会改革の運動、20世紀の福祉自由主義、20世紀後半の新自由主義など複数の潮流に分岐した。
現在の信奉者規模
測定不能(思想的立場であり帰属人口の統計がない。ロック『統治二論』、J.S.ミル『自由論』、ロールズ『正義論』といった中核テキストは本表のTXTに未収録のため、リベラルな権利論の定式として『アメリカ独立宣言』を暫定的に参照した。起点を17世紀の契約論に置くか19世紀の命名に置くかについて学説が分かれるため確度をBとした。)
対抗物語
ファシズム
現代への影響
個人の権利、法の支配、権力分立、市場と私的領域の保護は、多くの憲法秩序と国際人権規範の前提となっている。他方、経済的自由と平等の関係、文化的多様性の扱いをめぐって内部に持続的な論争がある。

関連する関係レコード

派生 Derivation 資本主義リベラリズム 確度B

市場交換と私的所有を軸とする社会編成が、所有的個人主義と経済的自由を中心概念とする政治的言説を生んだとする系譜(マクファーソン)。逆に、自由主義的な権利論と法制度こそが市場秩序の条件を整えたとする説明(ポランニー以降の議論)も有力であり、本エッジは相互構成的な関係のうち一方向を暫定的に記録したものである。因果の向きについては学説が分かれる。

成立:17世紀〜19世紀(数値は『国富論』刊行年を象徴的な暫定値とする) / 根拠:C.B.マクファーソン『所有的個人主義の政治理論』; カール・ポランニー『大転換』(批判側); アダム・スミス『国富論』

派生 Derivation リベラリズム民主主義 確度B

権利保障・立憲主義・代表制という枠組みが、選挙権の段階的な拡大を通じて大衆的な民主主義と結合し、20世紀の「自由民主主義」という複合形態を成立させた。19世紀の自由主義者の多くは制限選挙を支持しており、両者は当初対立的でもあったため、派生の主張は制度枠組みの水準に限られる。REL-0190(アテナイの民主政→民主主義)が途絶した古代モデルの再発見という経路を記録するのに対し、本エッジは近代民主主義に制度枠組みを供給した同時代の系譜を記録するものであり、両者は複数系譜の合流として理解される。

成立:19世紀 / 根拠:ノルベルト・ボッビオ『自由主義と民主主義』; ジョン・ダン『Setting the People Free』; ピエール・ロザンヴァロン『Le sacre du citoyen』

対立 Opposition リベラリズムファシズム 確度A

個人の権利、多元的な代表、権力の抑制を掲げる物語と、国民的統一体への同化と指導者原理を掲げる物語の正面対立。ファシズム側は議会制と個人主義を明示的な批判対象として綱領に掲げ、体制下では複数政党制および報道・結社の自由が停止された。

成立:1922年〜1945年 / 根拠:ロバート・O・パクストン『ファシズムの解剖学』; エミリオ・ジェンティーレ『The Sacralization of Politics in Fascist Italy』; ハンナ・アーレント『全体主義の起原』

対立 Opposition リベラリズムユーラシア主義 確度B

個人の権利と普遍的な制度形式を基準とする物語に対し、文明ごとに固有の価値と統治形式があるとして普遍性の主張そのものを退ける物語の対立。1990年代以降の再興期には、国際秩序の単極性と多極性をめぐる論争として定式化された。1920年代の学術運動と現代の政治的言説を同一の主体として扱うことには学説上の留保があるが、これはNAR-0049が同じ留保のもとで採用している括り方に従うものである。成立地域はロシアで、本表のREG項目に該当がないため空欄とする。

成立:1920年代/1990年代以降(数値は再興期の暫定値) / 根拠:マルレーヌ・ラリュエル『Russian Eurasianism』; アレクサンドル・ドゥーギン『地政学の基礎』(当事者側); チャールズ・クローヴァー『Black Wind, White Snow』

派生 Derivation リベラリズムフェミニズム 確度A

個人の権利と理性の普遍性という前提を女性に適用すべきだという要求として定式化された。ウルストンクラフトとミルの議論は、リベラリズムの原則の内的な不徹底を突く形をとっている。

成立:1792年〜19世紀後半 / 根拠:メアリ・ウルストンクラフト『女性の権利の擁護』; J. S. ミル『女性の隷従』

対立 Opposition リベラリズム中国的特色ある社会主義 確度B

複数政党制と権力分立を統治の正統性の条件とみるか、統治実績と党の指導を条件とみるかで両者の前提が異なる。双方とも市場と私的所有を一定程度前提とする点では重なっており、対立の焦点は政治体制の側にある。

成立:1989年以降 / 根拠:Daniel A. Bell, The China Model; 中兼和津次『中国経済発展論』

対立 Opposition リベラリズムポストヒューマニズム 確度B

批判的ポストヒューマニズムは、自律した理性的個人を権利と所有の担い手とするリベラリズムの人間像を、歴史的に構成された特殊な想定として対象化する。両者は人格の範囲と主体の自律をめぐって前提を共有せず、生命倫理と動物・環境の権利論において異なる帰結を導く。

成立:1990年代〜2000年代 / 根拠:N. キャサリン・ヘイルズ『How We Became Posthuman』(1999); ロージ・ブライドッティ『ポストヒューマン』(2013)

派生 Derivation リベラリズムトランスヒューマニズム 確度B

身体と精神の改変を個人の選択の領域とみなす「形態的自由」の主張は、自己所有と自己決定というリベラリズムの原理の延長として定式化された。運動の主流はこの自由主義的な枠組みを採り、国家による強制を伴った20世紀の優生政策との差異をそこに求めている。

成立:1990年代〜2000年代 / 根拠:ニック・ボストロム "In Defense of Posthuman Dignity" (2005); ジェイムズ・ヒューズ『Citizen Cyborg』(2004)

派生 Derivation リベラリズム新自由主義 確度B

古典的自由主義の再定義を目指す試みとして出発し、市場秩序は自然に生じるのではなく法と制度によって構築・維持されるという主張を核に据えた点で、自由放任論とは区別される。この点をめぐって秩序自由主義とオーストリア学派の間にも差異がある。

成立:1930年代〜1970年代 / 根拠:フィリップ・ミロウスキー & ディーター・プレーヴェ編『The Road from Mont Pèlerin』(2009); ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』(1962)