NAR-0081 / 物語(Narrative) / カテゴリ:未来

ポストヒューマニズム

Posthumanism

確度 B有力だが異説あり
発生年代
1985年(ハラウェイ「サイボーグ宣言」)/1990年代〜2000年代(理論的定式化)
中核概念
人格性(パーソンフッド)、主体他者境界
伝播経路
サイバネティクス、フェミニズム科学論、動物研究、科学技術社会論が交差する場で形成され、1985年のハラウェイのテクストと1990年代の文学理論・メディア研究を通じて用語が定着した。2000年代以降は英語圏の人文学からヨーロッパ大陸の哲学、環境人文学、デザイン論へ広がり、大学のカリキュラムと美術批評の語彙に組み込まれている。
現在の信奉者規模
測定不能(理論的潮流であり帰属人口の統計がない。人間の能力拡張を目指すトランスヒューマニズムと、人間中心主義そのものを問う批判的ポストヒューマニズムは、同じ接頭辞を共有しながら方向が異なり、文献でもしばしば混同される。この語義の不安定さのため確度をBとした。)
対抗物語
リベラリズム
現代への影響
人格の範囲、動物やAIの道徳的地位、環境をめぐる法と倫理の議論に語彙を提供している。抽象度が高く政策的含意が特定しにくいという批判が、実務側から繰り返し提起されている。

関連する関係レコード

対立 Opposition リベラリズムポストヒューマニズム 確度B

批判的ポストヒューマニズムは、自律した理性的個人を権利と所有の担い手とするリベラリズムの人間像を、歴史的に構成された特殊な想定として対象化する。両者は人格の範囲と主体の自律をめぐって前提を共有せず、生命倫理と動物・環境の権利論において異なる帰結を導く。

成立:1990年代〜2000年代 / 根拠:N. キャサリン・ヘイルズ『How We Became Posthuman』(1999); ロージ・ブライドッティ『ポストヒューマン』(2013)

派生 Derivation 大きな物語の終焉ポストヒューマニズム 確度B

普遍的な人間主体を前提とする大きな物語への懐疑が、人間と機械・動物・環境の境界を問い直す議論の前提を用意した。フーコーの「人間の終焉」の定式がポストヒューマニズムの出発点として繰り返し参照される。

成立:1980年代〜1990年代 / 根拠:ミシェル・フーコー『言葉と物』(1966)結語; ロージ・ブライドッティ『ポストヒューマン』(2013)

対立 Opposition ポストヒューマニズムトランスヒューマニズム 確度B

同じ接頭辞を共有しながら方向は逆で、トランスヒューマニズムは人間の能力を技術で拡張して啓蒙主義的な人間像を完成させようとし、批判的ポストヒューマニズムはその人間像そのものを問題化する。両者の混同は文献上も頻繁で、区別の要請自体が論争点となっている。

成立:1990年代〜2010年代 / 根拠:ケイリー・ウルフ『What Is Posthumanism?』(2010); フランチェスカ・フェランド「Posthumanism, Transhumanism…」(2013)

派生 Derivation ポストヒューマニズムマルチスピーシーズの思想 確度B

人間と非人間の境界を問う議論が、人類学とフィールド研究の方法へ翻案され、菌類・家畜・微生物叢を記述の共同参加者として扱う実践が生まれた。ハラウェイの伴侶種の議論が理論と民族誌を媒介した。

成立:2000年代後半〜2010年代 / 根拠:ダナ・ハラウェイ『伴侶種宣言』(2003); Kirksey & Helmreich "The Emergence of Multispecies Ethnography" (2010)