NAR-0040 / 物語(Narrative) / カテゴリ:建国神話
檀君神話と韓民族の物語
The Dangun Myth
確度 B有力だが異説あり
発生年代
1281年頃(『三国遺事』への記録)/前2333年(伝承上の建国年)/20世紀初頭(近代的な再文脈化)
発生地域
中核テキスト
(なし)
伝播経路
高麗末の『三国遺事』『帝王韻紀』に記録された古朝鮮の建国伝承が、朝鮮王朝期には国家祭祀の対象として位置づけられた。20世紀初頭には申采浩らの民族史叙述や大倧教の活動を通じて、植民地期の同化的な歴史叙述に対抗する民族の起源譚として再編され、解放後は南北双方の歴史教育と記念行事にそれぞれ異なる位置づけで組み込まれた。
現在の信奉者規模
測定不能(神話への帰属を測る統計がない。伝承上の建国年(前2333年)は後代の遡及的算定であり、考古学的な検証の対象とはならない。『三国遺事』の成立年(1281年頃)にも数年の幅がある。中核概念の「天命」は桓因・桓雄の天降り伝承への近似であり、中国的な天命思想とは系譜が異なる。)
対抗物語
現代への影響
民族の同質性と長い連続性を前提とする歴史像は、南北の統一言説や国民統合の語彙に用いられている。他方、単一民族という枠組み自体は、多文化化する社会の実態と史料批判の双方の観点から学術的な再検討が進んでいる。
関連する関係レコード
習合 Syncretism 仏教 → 檀君神話と韓民族の物語 確度B
檀君伝承を伝える現存最古の文献『三国遺事』は僧一然の編纂であり、天帝を「桓因(帝釈天)」と注記するなど仏教的語彙による枠づけがなされている。伝承そのものの起源は文献の成立より古いと考えられるため、習合は記録と解釈の層に限定される(確度B)。
対立 Opposition 日本の建国神話(記紀と万世一系) → 檀君神話と韓民族の物語 確度B
植民地期には日本と朝鮮の起源を同一の系譜に置く歴史叙述(日鮮同祖論)が公教育で用いられ、これに対し申采浩らは檀君を起点とする独自の民族史を対置した。二つの建国物語は起源の系譜をめぐって相互排他的な主張をなす。いずれも近代国家の自己叙述として構築されたものであり、史料批判の水準とは区別して扱う必要がある(確度B)。
輸入翻訳 Import / Translation ナショナリズム → 檀君神話と韓民族の物語 確度B
ヨーロッパ由来の民族=国民概念と民族史の叙述形式が受容され、文献に伝わる檀君伝承が「韓民族」の単一の始祖として再文脈化された。申采浩の史論、大倧教の運動、近代教科書の編纂がその媒体となった。伝承の存在自体は前近代に遡るため、翻訳の対象は伝承そのものではなく近代的な民族史の枠組みである。