NAR-0097 / 物語(Narrative) / カテゴリ:建国神話
ロシアの物語(第三のローマ/ルーシ起源)
The Russian Narrative: Third Rome and the Origins of Rus'
確度 B有力だが異説あり
発生年代
988年(ルーシの受洗)/16世紀初頭(修道士フィロフェイの書簡における「第三のローマ」)
発生地域
中核テキスト
(なし)
伝播経路
キエフ・ルーシのキリスト教受容を起点とし、1453年のコンスタンティノープル陥落後に、正統信仰の守護者の地位がモスクワに移ったとする語りが修道院の書簡と年代記を通じて形成された。18〜19世紀の帝国的自己意識、スラヴ派の議論、20世紀の亡命知識人によるユーラシア論を経て再解釈され、ソ連崩壊後には国家的自己記述の素材として再び前景化した。
現在の信奉者規模
測定不能(国民的自己記述であり帰属人口の統計がない。「第三のローマ」の定式が16世紀当時にどれほどの政治的重みを持ったかについては、後世の国家イデオロギーが遡及的に拡大解釈したとする研究(シニツィナら)が有力で、確度をBとした。キエフ・ルーシを起源とする語りは、ロシア・ウクライナ・ベラルーシの各国史でそれぞれ異なる形で継承されており、係争的である。)
対抗物語
(なし)
現代への影響
正統信仰と国家の結びつき、西欧とは異なる文明としての自己規定という主題は、現代ロシアの公的言説と対外政策の説明枠組みに繰り返し現れる。同時に、同じキエフ・ルーシの遺産をめぐって複数の国民史が競合しており、この競合自体が地域の政治的争点となっている。
関連する関係レコード
輸入翻訳 Import / Translation 東方正教 → ロシアの物語(第三のローマ/ルーシ起源) 確度B
1453年のコンスタンティノープル陥落後、正統信仰の守護者としての帝国の地位がモスクワへ移ったとする語りが、ビザンツの政治神学をロシアの文脈へ翻案する形で形成された。ビザンツ皇女との婚姻と双頭の鷲の採用は、この移転を象徴する装置として用いられた。
輸入翻訳 Import / Translation ナショナリズム → ロシアの物語(第三のローマ/ルーシ起源) 確度B
西欧起源の国民という枠組みが、正統信仰・専制・国民性という公式ナショナリティの定式や、スラヴ派と西欧派の論争を通じて受容され、ルーシ起源と第三のローマの語りが国民の物語として再編成された。
派生 Derivation ロシアの物語(第三のローマ/ルーシ起源) → ユーラシア主義 確度B
正統信仰と国家の結合、西欧とは異なる固有の文明という自己規定が、亡命知識人によってロシアをヨーロッパでもアジアでもない独自の空間とする地政学的な理論へ組み替えられた。