NAR-0056 / 物語(Narrative) / カテゴリ:未来

脱成長

Degrowth

確度 B有力だが異説あり
発生年代
1972年(『成長の限界』)/2002年(décroissance の運動化)/2008年(第1回国際脱成長会議)
発生地域
西ヨーロッパ
中核テキスト
成長の限界
伝播経路
ジョージェスク=レーゲンのエントロピー経済学、イリイチの制度批判、ローマクラブの『成長の限界』を前史として、2002年前後のフランス語圏で運動の標語として定式化された。2008年のパリ会議以降は隔年の国際会議、学術誌、市民団体のネットワークを通じてヨーロッパを中心に広がり、生態経済学の学術分野と接続している。
現在の信奉者規模
測定不能(運動への帰属を測る統計がない。GDPの縮小それ自体を目標とする立場と、成長を政策目標から外す(ポスト成長)立場は綱領を異にし、単一の物語として括ることに留保が要る。中核概念の「無限成長」は本物語が批判の対象とする概念であり、構成要素としてではなく争点として参照している。)
現代への影響
気候政策における十分性(sufficiency)や物質フットプリントの議論に語彙を提供している。経済成長と環境負荷の切り離し(デカップリング)が十分な速度で可能かどうかをめぐる実証的論争の一方の当事者である。

関連する関係レコード

対立 Opposition 資本主義脱成長 確度B

資本蓄積と生産の拡大を前提とする経済運営の物語に対し、物質・エネルギー消費の計画的な縮小と成長目標の放棄を掲げる物語の対立。既存のREL-0012(資本主義⇔社会主義)が所有と調整方式をめぐる対立であるのに対し、本エッジは成長そのものの是非をめぐる対立であり争点が異なる。脱成長の内部には資本主義との両立可能性を留保する立場もあるため確度はB。

成立:2002年以降 / 根拠:セルジュ・ラトゥーシュ『経済成長なき社会発展は可能か?』; ジェイソン・ヒッケル『Less is More』; ヨルゴス・カリス『Degrowth』

対立 Opposition 脱成長エコモダニズム 確度B

環境負荷の低減を経済規模の縮小によって達成すべきとする物語と、技術的集約と資源利用の切り離しにより成長を維持したまま達成できるとする物語の対立。デカップリングが十分な速度で実現しうるかという実証的な論点が対立の中心にあり、双方が同じ指標をめぐって異なる評価を提示している。

成立:2015年以降 / 根拠:『エコモダニスト宣言』(2015); ヨルゴス・カリス他『The Case for Degrowth』; ヘルムート・ハーバール他「A systematic review of the evidence on decoupling」(2020)

対立 Opposition 脱成長加速主義 確度B

技術と生産の速度を抑制し規模を縮小する方向に解決を求める物語と、技術的近代化を減速ではなく徹底することに解決を求める物語の対立。双方とも現在進行形の理論的潮流で内部の分岐が大きく、正面から対峙した制度化された論争としてではなく、批評文献(ノイス)における相互批判の水準で成立している対立である。

成立:2013年以降 / 根拠:ニック・スルニチェク&アレックス・ウィリアムズ『加速主義政治宣言』(2013); セルジュ・ラトゥーシュ『脱成長』; ベンジャミン・ノイス『Malign Velocities』

派生 Derivation 社会主義脱成長 確度B

資本蓄積と生産力主義への批判という枠組みを継承しつつ、社会主義が共有してきた生産力の発展という目標そのものを退ける立場として定式化された。直接の媒介は政治的エコロジーのゴルツであり、社会主義の系譜内にある。他方、生態経済学(ジョージェスク=レーゲン)とイリイチの制度批判は社会主義の外部にある並行的な源流であり本表に独立項目がないため、本エッジは複数ある源流のうち一つを記録するものである。

成立:1970年代〜2002年(数値は運動化の年を暫定値とする) / 根拠:アンドレ・ゴルツ『エコロジスト宣言』; ニコラス・ジョージェスク=レーゲン『エントロピー法則と経済過程』; ヨルゴス・カリス『Degrowth』

派生 Derivation 環境主義脱成長 確度B

環境主義の内部から、効率改善による問題解決の見通しを疑い、物質・エネルギー消費の総量縮小を掲げる潮流が分岐した。生態経済学とイリイチの制度批判が理論的な接続点となっている。

成立:1970年代〜2000年代 / 根拠:Giorgos Kallis, Degrowth; ニコラス・ジョージェスク=レーゲン『エントロピー法則と経済過程』