NAR-0018 / 物語(Narrative) / カテゴリ:近代イデオロギー

資本主義

Capitalism

確度 B有力だが異説あり
発生年代
16世紀後半〜17世紀初頭(商業・金融資本主義の確立)/18世紀後半〜(産業資本主義)
中核テキスト
国富論
中核概念
無限成長、階級、進歩
伝播経路
北イタリアと低地地方の商業・金融の慣行が、オランダとイギリスの株式会社と信用制度を経て制度化され、産業革命以降は工場生産と世界市場を通じて拡張した。20世紀後半の国際的な金融自由化により地球規模の分業体制となった。
現在の信奉者規模
測定不能(経済体制であり信奉者という単位での計測に適さない。起源をいつに置くかについては、商業説、産業説、農業資本主義説など複数の有力な学説がある。発生年_数値は、常設の資本市場と株式会社形態が制度として成立した時期(1602年のオランダ東インド会社とアムステルダム取引所に象徴される17世紀初頭)に置いた。旧版の1500年はブローデルの「長い16世紀」を起点とする見方に対応するが、本DBの関連リレーション(REL-0005 貨幣→資本主義、REL-0006、REL-0032 いずれも成立年1600)および NAR-0043 会社(1602年)との整合を欠いていたため改めた。)
対抗物語
社会主義
現代への影響
価格機構と資本蓄積を軸とする経済運営が広範な地域で採用され、成長、格差、環境負荷の評価をめぐる政策論争の対象となっている。

関連する関係レコード

派生 Derivation 貨幣 → 資本主義 確度B

貨幣が交換手段から自己増殖する資本(G-W-G')として再定義されたことで、蓄積の無限運動を正当化する物語が成立した。貨幣の存在自体は資本主義を必然化しないため、制度的条件を重視する説明と併存する。

成立:16〜18世紀 / 根拠:マルクス『資本論』第1巻; フェルナン・ブローデル『物質文明・経済・資本主義』

派生 Derivation 一神教(アブラハム系) → 資本主義 確度B

禁欲的プロテスタンティズムの召命観と予定説が、利潤の体系的追求と再投資を宗教的に正統化する心性を生んだとする系譜。ウェーバー・テーゼは影響力が大きい一方で経済史側からの反証も多く、学説上争いがある。

成立:16〜17世紀(学説提示は1904年) / 根拠:マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』; R.H.トーニー『宗教と資本主義の興隆』

対立 Opposition 資本主義 → 社会主義 確度A

生産手段の私的所有と市場的調整を正当とする物語と、それを廃棄して社会的所有・計画的調整へ移行すべきとする物語の正面対立。19世紀以降の政治対立軸の基軸をなす。

成立:1848年 / 根拠:マルクス/エンゲルス『共産党宣言』; カール・ポランニー『大転換』

派生 Derivation プロテスタンティズム → 資本主義 確度B

禁欲的プロテスタンティズムの召命観と予定説が、利潤の体系的追求と再投資を宗教的に正統化する心性を生んだとするウェーバー・テーゼ。既存のREL-0006は同一の学説を一神教(アブラハム系)という上位概念の水準で記述したものであり、本エッジはこれをより正確な系譜へ張り替えたものである。REL-0006はアンブレラ概念レベルの記述として残るが、両者は同じ主張を指すため独立した二つの因果として数えないこと。経済史側からの反証も多く確度はB。なおウェーバー・テーゼが対象とするのは長期の商業的拡大一般ではなく、禁欲的プロテスタンティズム以後に確立した近代資本主義の心性であり、NAR-0018 の代表年は常設の資本市場と株式会社形態が成立した17世紀初頭に置いている(ブローデルの「長い16世紀」を起点とする見方では前倒しとなる)。

成立:16〜17世紀(学説提示は1904年) / 根拠:マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』; R.H.トーニー『宗教と資本主義の興隆』; フェルナン・ブローデル『物質文明・経済・資本主義』(批判側)

派生 Derivation 資本主義 → 会社(法人) 確度B

遠隔地交易の資金調達と危険分散の必要が、譲渡可能な株式・永続的資本・有限責任という組織形式を要請し、資本蓄積の物語を担う制度的な器として会社が定型化された。勅許会社は交戦・条約・徴税といった主権的権能を伴う点で近代企業と性格が異なり、連続性の評価には留保が要るため確度はB。

成立:1602年〜19世紀 / 根拠:フェルナン・ブローデル『物質文明・経済・資本主義』; ロン・ハリス『Going the Distance』; フィリップ・スターン『The Company-State』

派生 Derivation 資本主義 → リベラリズム 確度B

市場交換と私的所有を軸とする社会編成が、所有的個人主義と経済的自由を中心概念とする政治的言説を生んだとする系譜(マクファーソン)。逆に、自由主義的な権利論と法制度こそが市場秩序の条件を整えたとする説明(ポランニー以降の議論)も有力であり、本エッジは相互構成的な関係のうち一方向を暫定的に記録したものである。因果の向きについては学説が分かれる。

成立:17世紀〜19世紀(数値は『国富論』刊行年を象徴的な暫定値とする) / 根拠:C.B.マクファーソン『所有的個人主義の政治理論』; カール・ポランニー『大転換』(批判側); アダム・スミス『国富論』

対立 Opposition 資本主義 → 脱成長 確度B

資本蓄積と生産の拡大を前提とする経済運営の物語に対し、物質・エネルギー消費の計画的な縮小と成長目標の放棄を掲げる物語の対立。既存のREL-0012(資本主義⇔社会主義)が所有と調整方式をめぐる対立であるのに対し、本エッジは成長そのものの是非をめぐる対立であり争点が異なる。脱成長の内部には資本主義との両立可能性を留保する立場もあるため確度はB。

成立:2002年以降 / 根拠:セルジュ・ラトゥーシュ『経済成長なき社会発展は可能か?』; ジェイソン・ヒッケル『Less is More』; ヨルゴス・カリス『Degrowth』

派生 Derivation 資本主義 → 加速主義 確度B

資本が技術革新と市場の拡大を通じて既存の社会関係を絶えず解体するという分析が、その過程の抑制ではなく徹底に活路を求める立場として反転された。加速主義は資本主義の記述を出発点としつつ、左派潮流は生産力の社会的再領有を、右派潮流は過程の自律性の肯定を主張しており、本エッジは両潮流に共通する出発点のみを記録する。

成立:1970年代〜2013年 / 根拠:ジル・ドゥルーズ&フェリックス・ガタリ『アンチ・オイディプス』; ロビン・マッケイ&アルミン・アヴァネシアン編『#Accelerate: The Accelerationist Reader』; ベンジャミン・ノイス『Malign Velocities』

対立 Opposition 資本主義 → 環境主義 確度B

蓄積と成長の継続を前提とする物語と、生態系の吸収能力に上限を置く物語の間で、成長と環境負荷の切り離しが十分な速度で可能かが争点となっている。市場手段による解決を志向する環境主義の潮流も存在するため、対立は全面的ではない。

成立:1970年代〜現在 / 根拠:ローマクラブ『成長の限界』; Tim Jackson, Prosperity without Growth

習合 Syncretism 資本主義 → 中国的特色ある社会主義 確度B

社会主義市場経済という定式のもとで、私的経営、株式市場、世界貿易機関への加盟が体制の内部に組み込まれた。市場制度をどこまで体制の構成要素とみるかについては解釈が分かれている。

成立:1992年〜2001年 / 根拠:Barry Naughton, The Chinese Economy; Yasheng Huang, Capitalism with Chinese Characteristics