NAR-0050 / 物語(Narrative) / カテゴリ:国家思想

パン・アフリカニズム

Pan-Africanism

確度 B有力だが異説あり
発生年代
1900年(ロンドンの第1回パン・アフリカ会議)〜1963年(アフリカ統一機構の設立)
中核テキスト
(なし)
中核概念
国民主権天賦人権
伝播経路
カリブ海・北米のディアスポラ知識人(シルヴェスター・ウィリアムズ、デュボイス、ガーヴィーら)が主導した一連の会議と機関誌を通じて形成され、1945年のマンチェスター会議で脱植民地化の綱領と結びついた。エンクルマ、ケニヤッタらの帰国により大陸の独立運動へ還流し、1963年のアフリカ統一機構、2002年のアフリカ連合として制度化された。
現在の信奉者規模
測定不能(理念への帰属を測る統計がない。大陸の政治的統一を志向する潮流とディアスポラの文化的連帯を志向する潮流は綱領を異にし、単一の物語として括ることに留保が要るため確度をBとした。発生地は会議の開催地であるロンドンおよび大西洋のディアスポラ社会であり、該当するREGを参照した。)
対抗物語
帝国
現代への影響
アフリカ連合、地域経済共同体、大陸自由貿易圏といった地域統合の制度に理念的基盤を与えている。奴隷制と植民地支配に関する賠償、文化財の返還、ディアスポラの市民権をめぐる現代の議論でも参照されている。

関連する関係レコード

派生 Derivation パン・アフリカニズムネグリチュード 確度B

ディアスポラ知識人によるパン・アフリカ会議とハーレム・ルネサンスの言説が、パリに学ぶカリブ海・西アフリカ出身の学生に受容され、黒人性を積極的価値として定式化する文芸運動へ展開した。ネグリチュードは文学的・存在論的な主題を中心とし、大陸統一という政治的綱領とは重点が異なるため、派生の主張は言説環境の水準にとどまり確度はB。

成立:1920年代〜1930年代 / 根拠:W.E.B.デュボイス『黒人のたましい』; ブレント・ヘイズ・エドワーズ『The Practice of Diaspora』; ゲイリー・ワイルダー『The French Imperial Nation-State』

対立 Opposition 帝国パン・アフリカニズム 確度B

文明化の使命により広域支配を正統化する物語に対し、アフリカ系の人々の統一と自決を対置した反植民地の物語。1945年のマンチェスター会議は植民地支配の終結を明示的な綱領として掲げた。対立の射程は近代ヨーロッパの植民地帝国に限定され、帝国一般への対立とするには留保が要る(既存のREL-0018と同型の限定)。

成立:1900年〜1963年 / 根拠:ジョージ・パドモア『Pan-Africanism or Communism?』; ハキーム・アディ『Pan-Africanism: A History』; クワメ・エンクルマ『Africa Must Unite』

輸入翻訳 Import / Translation ナショナリズムパン・アフリカニズム 確度B

ヨーロッパ由来の民族自決と国民国家の語彙が、単一の国民ではなく大陸およびディアスポラという単位へ拡大して翻案された。ディアスポラ社会で形成された言説が独立運動の指導者の帰国により大陸へ還流し、独立国家の樹立と大陸統合という二つの綱領の緊張として制度化された点に、この翻訳の特徴がある。翻案の幅が大きく「輸入翻訳」という種別の当てはめには判断が入る。また、起源をエチオピアニズムや奴隷制廃止運動などディアスポラ固有の系譜に求め、ヨーロッパ由来の語彙の受容という説明を退ける議論もある。

成立:1900年〜1963年 / 根拠:ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』; ハキーム・アディ『Pan-Africanism: A History』; フレデリック・クーパー『Africa in the World』

対立 Opposition パン・アフリカニズムブラジルの人種民主主義 確度B

大西洋を越えた黒人の共通経験と連帯を語る枠組みが、ブラジルの黒人運動に、混淆による調和という国民の物語を検証する視座を与えた。1978年の統一黒人運動の結成以降、人種民主主義は達成された現実ではなく格差を不可視化する語りとして問い直された。

成立:20世紀後半 / 根拠:マイケル・ハンチャード『Orpheus and Power』(1994); フロレスタン・フェルナンデス『A integração do negro na sociedade de classes』(1964)

派生 Derivation パン・アフリカニズム反植民地主義・脱植民地化 確度B

大西洋を越えた黒人の連帯を掲げる会議と出版のネットワークが、1945年のマンチェスター汎アフリカ会議を画期として、植民地支配の終結と独立を明示的な政治目標へと転換させた。この場に集まった人々が独立後の各国の指導層を形成した。

成立:20世紀前半 / 根拠:ホーレス・キャンベル『Pan-Africanism』(1994); クワメ・エンクルマ『自伝』(1957)