NAR-0003 / 物語(Narrative) / カテゴリ:宗教

儒教

Confucianism

確度 B有力だが異説あり
発生年代
前6世紀後半〜前5世紀(孔子の活動期)
発生地域
東アジア
中核テキスト
論語
中核概念
天命、主権、階級
伝播経路
戦国期の諸子百家の論争を経て漢代に国家の統治理念として制度化され、科挙制を通じて官僚層に再生産された。漢字文化圏の交流により朝鮮半島・ベトナム・日本へ伝わり、各地の在来の統治制度や宗教実践と結合した。
現在の信奉者規模
測定不能(自己申告による信者統計が成立しにくく、規範・儀礼・学問としての実践が他の宗教実践と重層するため規模の推計は困難。中核概念のうち「階級」は身分秩序・礼的序列への近似であり、対応は暫定的。)
対抗物語
(なし)
現代への影響
家族倫理、教育重視、官僚制の正統性観念として東アジアの社会規範に残る。近代以降は経済発展の文化的要因をめぐる議論や、東アジアの政治文化論の参照枠としても扱われている。

関連する関係レコード

派生 Derivation 中華と天命 → 儒教 確度B

周初に成立した天命観念——統治の正統性は超越的な天の委任に由来し、徳を失えば剥奪されるという枠組み——を、孔子とその継承者が徳治の教説として引き受け、孟子が易姓革命論として理論化した。旧版は「儒教→中華と天命」の向きで、儒教が既存の天命観を体系化した点を記録していたが、天命観念の成立(前11世紀)が儒教の成立(前6世紀)に先行する以上、系譜の親は天命の側である。よってFrom/Toを入れ替え、儒教が受け取った観念的前提として記録し直した。儒教による体系化の成果は NAR-0073 儒教的統治論(徳治)への派生(REL-0109)で、中華秩序の後代の展開はNAR-0011 の各エッジで記録する。

成立:前6世紀〜前4世紀(孔子から孟子まで) / 根拠:『書経』(周書); 『孟子』; 溝口雄三『中国の公と私』; ジョン・K・フェアバンク編『中国的世界秩序』

習合 Syncretism 仏教 → 儒教 確度A

宋代の道学は華厳・禅の存在論と修養論を摂取し、理気論・心性論という形而上学を備えた新しい儒教(朱子学)を形成した。排仏を掲げつつ仏教的枠組みを内在化した点に習合の特質がある。

成立:11〜12世紀 / 根拠:島田虔次『朱子学と陽明学』; 荒木見悟『仏教と儒教』; Wm.T.ドバリー『朱子学と自由の伝統』

習合 Syncretism 儒教 → 日本の建国神話(記紀と万世一系) 確度B

垂加神道および後期水戸学が、儒教の名分論・大義名分と記紀神話の皇統観を結合し、尊王を軸とする政治的正統性の物語を作り出した。幕末の政治運動の思想的基盤となった。

成立:17世紀〜1825年 / 根拠:会沢正志斎『新論』; 丸山眞男『日本政治思想史研究』; ボブ・T・ワカバヤシ『Anti-Foreignism and Western Learning in Early-Modern Japan』

習合 Syncretism 儒教 → 道教 確度B

三教合一の潮流のもとで、道教の教団は儒教の倫理規範(忠孝、功過格による善行の計量)を戒律体系に取り込み、全真教などは三教の一致を明示的に綱領に掲げた。逆方向の影響(宋明理学への道教的宇宙論の寄与)も無視できず、方向を一方に固定することには無理があるため確度はB。

成立:6〜16世紀 / 根拠:吉岡義豊『道教と仏教』; 酒井忠夫『中国善書の研究』; リヴィア・コーン編『Daoism Handbook』

派生 Derivation 儒教 → 儒教的統治論(徳治) 確度B

礼と仁をめぐる教説から、統治者の徳が民を感化するという統治の規範論が抽出され、漢代に官学として制度化された。倫理の物語が統治技術の物語へ特殊化した派生である。

成立:前5世紀〜前2世紀 / 根拠:『論語』為政篇; 渡辺信一郎『中国古代の王権と天下秩序』

習合 Syncretism 儒教 → シンガポールの多民族国家の物語 確度B

経済発展と社会秩序を説明する語彙として、家族・共同体を個人に優先させる価値が国家の言説に取り込まれ、1982年からの儒家倫理の学校教育導入と1991年の共通価値観白書に結実した。多民族の枠組みを維持するため、儒教は特定民族の伝統ではなく汎アジア的な価値として提示された。

成立:1980年代〜1990年代 / 根拠:シンガポール政府『Shared Values』白書(1991); Beng-Huat Chua "Culture, Multiracialism and National Identity in Singapore" (1998)