サピエンス Sapiens
宗教より深い層にある、物語という能力そのものの歴史。貨幣・帝国・科学革命・農業革命など、実体を持たないが多数が信じることによって実在と同じ効果を持つ制度・出来事を扱う。他の5カテゴリを「人間の特殊な能力の応用例」として一望するための基盤層である。
記事一覧
結論
帝国——複数を1つにまとめる物語
帝国は、被支配集団を1つの国民に作り替えることなく差異を階層的に束ねる統治の物語として5,000年にわたり広域支配の標準形であり続けたが、統治の単位と文化の単位の一致を要求する原理に200年あまりで置き換えられた——ただし帝国が引いた境界と分類は制度として残り、現在の政治が扱う課題の形をなお規定している。
結論
貨幣——最も成功した共同幻想
貨幣が人類のほぼ全員に共有される唯一の物語になったのは、素材に価値が宿っているからでも制度が優れているからでもなく、信じる内容を指定せず「他人も受け取るだろう」という予期だけを要求する空白の形式であり、国家・法・会社という別の物語に埋め込まれることで運搬されたからである。
結論
科学革命——「知らない」から始める方法
科学革命に固有だったのは地動説でも万有引力でもなく、「これはまだ知られていない」という言明を知識生産の出発点として制度に組み込んだ手続きであり、そこから派生した進歩という時間感覚が産業革命から未来技術論までを貫く一方、手続きを外して結論の権威だけが持ち出されたときに、この物語は最も大きな被害を生んだ。